立ち飲みの作法
最近、福岡では立ち飲みのお店が増えている。
もちろん、立ち飲みなので座るための椅子は無く、
終始立って飲むことになる。
椅子がないのでお客さんも多く収容でき、
それぞれのお客さんの距離は近くなる。
といはいえ、空いているときは電車の席のように
ある程度の間隔をあけているので交流が生まれることはそれほどない。
僕自身は見知らぬ人に積極的に声をかける方ではないので
立ち飲みでも端っこで一人飲むことが多い。
そんなある日、僕が行った日が大盛況で店内は人でごったがえしていた。
店主に一人であることを告げると一人でも過ごしやすいように
カウンターの端っこの席へ案内してくれた。
知り合いもいないので一人黙々と飲んでいたのだが、
賑やかな店内で一人置き去りにされているような、
今にも逃げだしたい感覚に陥っている自分がいた。
きっと、僕は常に周りのことを伺っているような人間だから
昼飯を一人では食べることができないような、自分の中の過剰な自分が
そんな感覚を作り出していたんだろうと思う。
そんな一人の世界に入っていた僕に
「よかったらこっちで一緒に飲みませんか?」
と声をかけてくれた人がいた。
その人はそういいながらカウンターで飲んでいた僕の隣で話をつづけ、
少しずつ周りも巻き込みながら話を広げていってくれた。
おかげで僕の世界も広がり、とても良い時間を過ごすことができた。
一人で飲むことが楽しい人もいるけど、そうじゃない人もいる。
あの人がしてくれたことが誰にでもあてはまるとは思わないけど、
僕が感じた救われたような感覚を、別の誰かにも伝えていきたいと思った。
これも一つの立ち飲みの作法なんじゃないでしょうか。